帝国海軍レシピ集TEIKOKU KAIGUN RECIPE ARCHIVE
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艦の台所に、
教科書があった。

明治41年(1908)の『海軍割烹術参考書』から、昭和18年(1943)の『海軍主計兵調理術教科書』まで。帝国海軍の主計兵たちが学んだ料理を、教科書の原文と、材料・作り方の現代語訳で読む史料レシピ集です。

収録方針:原文と作り方が実際に確認できる料理だけを載せます。料理名だけが目次などで確認できても、作り方が書かれていないものや、原文の全文を確認できないものは収録しません。創作した「原文」は載せません。

軍艦の烹炊所で魚をさばき、野菜の下ごしらえをする白い調理服姿の水兵たちを描いたイラスト。奥には蒸気の立つ大釜が見える
挿絵:艦内厨房の様子を描いたイラストレーション(写真ではありません)

TODAY'S DISH

今日の1品

収録した全328品の中から、1品をランダムにおすすめします。今日の献立に迷ったら、まずこのボタンを押してみてください。

四つの教科書

海軍は調理担当の育成に力を入れ、時代ごとに教科書を改めていきました。ここで扱うのは、ご依頼の4冊です。原本のうち3冊は舞鶴の海上自衛隊第4術科学校に所蔵され、舞鶴市が全文PDFを公開しています。

1908明治41年

海軍割烹術参考書

舞鶴海兵団が五等主厨(調理担当)の育成のために編んだ最古級の海軍料理書。和食・洋食あわせて約200種の調理法のほか、漬物の漬け方、乾物の戻し方、給仕心得まで載る。「カレイライス」は印刷で確認できる最古の海軍カレーのレシピとされる。

発行:1908年9月1日/舞鶴海兵団
1918大正7年

海軍四等主計兵厨業教科書

新任の調理担当向けの入門教科書。調理の基本から約200種のレシピを収め、配属先へ持ち運べるポケットサイズだった。長期航海の壊血病対策として英国海軍から伝わった炭酸レモン飲料「レモネード」のレシピでも知られる。

発行:海軍教育本部(1918年)
※書名について:大正7年(1918)の初版は『海軍五等主厨厨業教科書』として発行された。「主計兵」への改称は大正9年(1920)の改正以降で、舞鶴市と海上自衛隊が所蔵・紹介する版は本ページの題名『海軍四等主計兵厨業教科書』を用いている。
1938昭和13年

海軍厨業管理教科書

海軍経理学校による、献立・栄養・糧食の保存と管理まで扱う上級の教科書。肉じゃがのルーツといわれる「甘煮」が載る。研究者の指摘では、これは分量を定めたレシピというより、烹炊指揮官の教育用に調理工程と所要時間を記録したデータ集の性格が強い。

発行:海軍経理学校(1938年)
1943昭和18年

海軍主計兵調理術教科書

全375ページの集大成。和食・洋食・中華の調理法に加え、艦内で豆腐・納豆・もやし・うどんまで作る食品生産法、潜水艦航海食、航空食、患者食、野外烹炊、配食と饗応の作法までを網羅する。真面目に学べば町の料理人として通用する水準と評された。

発行:海軍省教育局(1943年編纂)

レシピを探す

カテゴリと教科書で絞り込めます。ここに載るのは、原文の引用と作り方、現代語訳を全文読める料理だけです。各レシピは「材料(原文の記載)」「材料(現代語訳)」「原文」「作り方(現代語訳)」の順で読めます。材料の現代語訳では、舊字・旧仮名の材料名(鹽→塩、麥粉→小麦粉、馬鈴薯→じゃがいも、玉葱→玉ねぎなど)と度量衡(瓦→g、瓩→kg、立→L)を今の表記に置き換え、分量そのものは原書の記載のままにしています。作り方が確認できない料理は載せていません。舞鶴市が公開する原書全文PDFを一冊ずつ照合し、作り方まで確認できた料理を収録しました(1908年版181品、1918年版146品、1938年版1品、全328品)。1908年版は、日本料理之部・西洋料理之部・菓子ノ部・漬物ノ漬方と乾物野菜類を通読し、作り方が書かれている項目を収録しました。1918年版も、日本料理(第二節)・支那料理(第四節)と、西洋料理(第三節)のスープ類・焼物類・蒸焼類・煮込物類・揚物類・茹物類・飯物類・サラド類・雑類・茶ノ出シ方・菓子類・カクテル飲物類の十二類を通読し、作り方が書かれている項目を収録しました。両版とも、原文自体が「前項に同じ」「調理法を略す」として自前の作り方を書いていない参照だけの項目(コンビーフ、鹽豚、タピオカプリン、ロースド・ポーク、ボイルド・フィッシュなど13品)は、作り方が確認できないため収録していません。1938年版は厨業管理の教科書で、献立表・工程表が中心のため、作り方の全文を確認できた「甘煮」のみを収録しました。1943年版については、全文を一般公開する公的アーカイブが確認できなかったため、教科書の紹介のみとしています。

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原文を読むための用語集

教科書の原文には、当時の厨房言葉やカタカナ語が多く出てきます。現代語訳を読む手がかりに。

ヘット
牛脂のこと。カレーやシチューのルウを炒める油として多用された。現代ならバターやサラダ油で代用できる。
スープ
牛骨・鶏ガラなどをくず野菜と煮て濾した出汁(ブイヨン)。当時はルウをのばすだけでなく、飯を炊くのにも使った。
チャツネ
果物や野菜を甘酸っぱく煮た付け合わせ。カレイライスに添える漬物類の代表として原文に名が出る。
賽の目
サイコロのように四角く小さく切る切り方。カレーの具の切り方として原文が指定する。
送気(そうき)
蒸気釜へ蒸気を送って加熱すること。『海軍厨業管理教科書』の工程表に号令のように記される。
主計兵・主厨
経理・給食を担う兵。調理担当は主厨とも呼ばれ、階級に応じて厨業教科書で訓練を受けた。
甘煮(あまに)
1938年の教科書に載る牛肉と野菜の甘辛い煮物。現在の肉じゃがと材料・作り方が一致することから、そのルーツとされる。読みは「うまに」の可能性も指摘される。
瓦・瓩・立
1918年の教科書で使われる度量衡。瓦(グラム)、瓩(キログラム)、立(リットル)。一人前110瓦、十人前で砂糖300瓦など、分量が数字で指定される。
フーカデン
フランス料理のフリカンドー(仔牛などの煮込み)がなまった語。1908年の参考書を代表する洋食の一つ。

出典・原文にあたるには

このページの引用と記述は、以下の公開史料・公的機関の解説に基づきます。教科書の全文は舞鶴市が公開するPDFで誰でも読めます。